■最適化で股関節周辺のつまり感を解消しよう
腰の詰まり感を解消してくれるのは、WRのRSR、1本3万円近いシートセットバック構造の高級カーボンシートポストです。
8月の黒姫高原るんるん合宿へ参加した2人のフィッティングをしていて、サドルをもう少し後ろに設定した方が股関節の詰まり感を解消できて、お腹の部分に空間ができるポジションを実現できると思いました。
最近、鈴木店長もフィッティングで気にしているのが股関節周りの詰まり感です。
パワーを発揮できる腰の位置をキープできると、座骨をサドルへかぶせる姿勢を無理無くできて、太ももの後ろ側の筋肉や、腸腰筋や腹筋や背筋などの体幹の広い範囲の筋肉も動員して、脚を踏み込むパワーを発揮できて、乳酸の発生を抑制できる「全体踏み」のペダリングを実現できます。
必要なパワーより大きなパワーを発揮できる姿勢にできると、無酸素的な運動の比率を少なくできて、乳酸の爆発的な発生を抑制できて、高いスピードをより長くキープできルようになります。
ところが2人とも、シートポストのヤグラの設計と、サドルのレールのスライド範囲が一杯一杯で、これ以上後ろへ引けない状態でした。腰の位置が前に出てクランクを前ももの大腿四頭筋主体で踏み込む、明らかな前乗りという状態ではありませんでしたが、固定式のローラー台でペダリングを見ると、股関節の動きに詰まり感があって、ペダリングする脚の動きに上死点でも下死点でも足のスピードが落ちていました。
脚の動きが停滞したのを、ケイデンスを上げるのに脚のスピードを上げようとする動きで、余計な力を使っています。
股関節のつまり感は、股関節周りの筋肉が発達している、ベテランライダーでもなかなか気がつかないものです。
上半身の重さも利用して強くクランクを踏み込みたいと、ついつい腰を前へ移動してペダリングしがちです。ダンシングを思い浮かべてください。
腰をサドルから浮かして、腰の位置をハンガーの真上、もしくは前へ移動して、体重を踏み込む脚にかけて、ひと踏みのトルクが大きいペダリングをしています。
これをシッティングの状態でやろうとすると、サドルの前に腰を移動して、体重を乗せて踏み込むペダリングになります。
1時間くらいなら、前乗り気味の踏み込むペダリングで高速走行を継続できますが、前乗りのペダリングは、太ももの前側の、パワーがあって耐乳酸性も高い大腿四頭筋にストレスが集中します。
その筋肉が乳酸の発生や乳酸濃度に耐えられる間は元気に走れます。
でも、ライダーの耐乳酸性や乳酸除去のレベルを越えて血中乳酸濃度が上昇してしまうと、急激に脚の筋肉を収縮しにくくなって、クランクを踏み込めなくなります。
継続できる時間は筋肉の発達や、耐乳酸性や乳酸除去能力で違いますが、だいたい1時間ぐらいで脚を動かしにくくなります。
スピードを落として運動強度を低下させて乳酸の発生を少なくして、血液に乗せて肝臓へ運び出し、血中乳酸濃度を低下させて脚を回復して、踏み込めるようになるには20分ぐらいかかります。
そこで提案したいのが、ペダリングする筋肉の範囲を大きくして、パワーを引き出せて、しかもストレスを分散できる全体踏みのペダリングです。
さらに、ケイデンスを無理なく、なるべく高く保つペダリングです。
毎分あたりのクランク回転数を90回転から120回転に保つと、呼吸数や心拍数は上昇して、苦しく感じるのですが、クランクの1踏みのパワーは同じでも、乳酸の発生を抑えることができるし、筋肉へのダメージを小さくできます。
より長くスピードを保って走るには最適なペダリングです。
キープできるぎりぎりスピードの集団走行に参加しているライダーは、体重を利用して大腿四頭筋を主に使ってクランクを踏み込まないと千切れてしまうので、サドルの先端にお尻が突き刺さるような姿勢で走り続けます。
そうなるとサドルを前に移動して腰の位置を支えたくなって、サドルを前に移動します。
ところが,腰の位置を前に出して固定すると、体重をかけて踏み込みやすいのですが、股関節に詰まり感が発生して、ペダリングする脚の停滞が発生します。
すると今度は詰まり感に気付いたライダーは、股関節の角度を開いて詰まり感や、脚を真っすぐに伸ばしたいとストレスを感じて、それを解消しようとサドルの高さを上げます。
サドルを高く設定することで脚が伸びて,一旦は気持ち良くペダリングできるようになりますが、そこに筋肉や関節や靱帯への負担が増すというワナが待っているのです。
伸び切った脚の膝関節が開いて、下死点を越えて脚が屈曲するのに負担が増し手、膝周辺に痛みが発生することがあります。
バイクライドは平坦コースだけでなく、ダンヒルやコーナーがあります。
しかも疲れた時の上り坂での、カカトが下がった状態の踏み込みもあります。
サドルの高さにゆとりが無いと脚が伸び切ってしまい、腰の位置を移動してペダリングすることができなくなります。
ラウンドタイプのシートセットバックを意識したカーボンシートポストもFSAやルックなどにありますが、WRのRSRのような上端までプレーンなチューブのモデルは少ないのです。
ユーザーから後ろへ引きたい要望があることを知っているから製造しているのです。ロードバイクのシートポストのヤグラの設計は、一般的なモデルはサドルを前後へ移動できる幅が、シートポスト径の中心から、0mmから15mm程度後ろへ引ける設計が普通になっています。
WRのRSRは2本ボルト止めのヤグラで、ヤグラを固定する部分が後ろへ延長されて、0mmから35mm後ろへスライドできる構造になっています。
フレームサイズがハンガー中心&シートチューブトップで、500mm前後のフレームサイズなら、シートポスト先端での10mmの差は、シートチューブの角度の約1度に相当します。
カーボンフレームのハンガー中心&シートチューブトップのフレームサイズが480mmから550mmサイズくらいの、シートチューブの角度の設計は、75度くらいから74度くらいに集中しています。
15mm後ろへ引けるとして75度のシートチューブなら73度半に設定できます。身長の低いライダーも、180cm近いライダーも、巡航速度で股関節の詰まり感なく心地よく走るには、73度前後のライダーが多いのです。
基本はライダーが踏めて回せるペダリングをできる腰の位置を見極めて、その腰をサポートする位置にサドルを移動して固定することが重要です。
目安は毎粉80回転できる,少し重めの負荷でしばらくペダリングして、自然に腰が移動していく位置が重要です。
さらに、上り坂を実際に走ってもらって腰の位置を見極めて、必要ならサドルの位置を微調整します。
その時にシートセットバックのシートポストが必要になることがあるのです。
サドルを前後へ動かすと、ハンガーの中心からサドルの上の面までの距離が変化します。
前に移動すればハンガーまでが近くなるので高くしたり、後ろへ移動すればハンガーまでが遠くなるので低く微調整が必要になります。
ではでは。