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月刊サイクルスポーツではおなじみのフリーライター藤下雅裕氏によるブログ「自転車生活」。
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藤下さんの「自転車生活」VOL.392

4発プロペラの飛行艇が生き残っている不思議

 

日本には新明和工業という会社があって、この会社の作っている機械には見えにくいところでお世話になっているんです。

 

例えばお引っ越しの家具などのトラックからの積み降ろしのリフト、ゴミ回収車のゴミをかき込む機械などです。

トラックの特装部門でのシェアは日本一だそうです。

そんな会社の紹介の中に防衛省への部品供給という項目があります。

 

そんな新明和工業が、4発エンジンで速度やトルクに合わせてプロペラの角度を変えられる、

可変ピッチのプロペラを装備した、胴体が船のような、とてもユニークな飛行機を作っています。

 

沿岸警備隊も自衛隊も海難救助機として少量生産の機体ですが正式採用しています。

現代のジェット機と比較すると、基本設計の年代も古く

スピードも遅く航続距離も今ひとつの機体なのに4発のプロペラ機が生き残っています。

 

日本は昭和の初期から飛行場の整備がいらない小型や中型の飛行艇の開発に力を入れていました。

湖や海などの水面を飛行場、滑水面として離発着する飛行艇の分野で、世界的な水準をはるかに越えた

荒れた水面から離発着できる中型の飛行艇を作る技術がありました。

 

飛行艇の基地は海岸または湖畔に短いスロープを築けば機体を揚陸して保管や整備をできます。

目立つ滑走路を必要としないので活動の秘匿性もあります。

滑走路を破壊されたり、修理しないと離発着できなくなったりするリスクも小さくなります。

 

お台場の船の科学館の駐車場に展示されていた二式大艇がその現物です。

 

国産初の双発の100席の小型ジェット旅客機のMRJをテイクオフさせた

三菱の航空機部門も、昭和初期は有名なプロペラ単発の飛行機を設計

中島飛行機製造と共に主要機として大量生産して

戦後は航空自衛隊のためのジェット機の、アメリカメーカーが設計した機体のライセンス生産や

自衛隊が使用する国産ジェット機や民生用の双発のプロペラ機を開発製造していました。

 

ホンダはちょっと特殊で、2輪に始まり乗用車にも参入して輸出企業として経済規模を拡大して

創業者の夢だった、飛行機開発のしやすい環境のアメリカに拠点を置いて

双発の小型ジェット機をビジネス化しようとしています。

 

飛行艇を作る会社は、US-1AとUS−2の、この飛行艇作りだけでは余りに少数製造で食べていけないので

車に取り付けるリフトや移動式の駐車システムなどを生産して高い評価を得ています。

 

飛行機は基本設計からずいぶん経過した現在でも、この特殊な機体の技術レベルは圧倒的で

各国の軍需関係者や海難救助関係者から注目されて、少量ながら国内でも運用されて、輸出もされています。

 

プロペラ機は古くさいとか遅いイメージですが

そこに低速飛行での安定性、荒れた水面で離発着できる海難救助能力を生み出すカギがあるそうです。

 

悪天候時の操縦はかなり難しいので

乗員のライセンスを取得するまでの研修期間は、陸上の滑走路を離発着する飛行機の単独飛行までの時間の数倍かかるそうです。

 

新明和の飛行艇の4発エンジンのプロペラが回る方向は、右も左も右回転と同じ方向で

自然に飛行機はわずかに右へ右へと飛ぶのだそうです。

 

こうした力を相殺させる方法もあるそうですが、4発エンジンの共通パーツ化などの供給や整備性も含めて

きっと何か意味があって踏襲されているのでしょうね。

 

公称、荒波3mという、あまりに飛び抜けた水面からの離発着能力が、この飛行機の息を長らえさせているわけですが

外観的に余り変化はないのですが、波を制圧してさらに荒波でも離発着できるようになったり

電子機器の整備など、色々なバージョンアップが行われているみたいです。

 

日本には武器輸出の法律があってなかなか難しいグレーゾーンの機体でしたが

改正されて、もっと注目されたり、売りやすくなるのかも。

 

日本はカーボン素材の分野でも東レ、三菱レーヨン、帝人、新日鉄化学などが世界をリードしていて

軍需分野だけでなく、民生品にも広く採用され

もちろん自転車の素材にも最先端の破断特性と弾性率がバランスしたカーボン繊維が採用されています。

 

自転車乗りでもある航空機製造のエンジニアが、昔からこのユニークな機体に興味を持っていて

採算度返しの最高の素材で、コンピュータシミュレーションで再設計してみたそうです。

 

飛行艇ならではのフロートの位置、離発着時の水の抵抗に関わる

船底の形状や横幅と縦方向の水の抵抗を減らす比率をキープすること。

水の影響を4発のエンジンの吸排気が受けない高さ。

バラストの給排水機構の位置。

必要な乗員数。

ダウンバーストを検知する気象レーダーなどの電子装置の増設。

水をかぶっても浸水しない救助者の取り入れ口。

独特の設計要素もあって形状を崩す斬新な機体デザインは採用しにくいようです。

 

東レのカーボンを採用した想定のシミュレーションを見せてもらいました。

高弾性で破断特性が高次元でバランスしたカーボン素材を採用して、オートクレーブ、金型による精密一体成型、超高圧粉体カーボン成型など、あらゆる成型方法が採用されます。

 

機体の軽量化と強度の大幅向上

フライバイワイヤーと電子制御支援による操縦システム

空気抵抗の軽減による燃費向上

機体を安定させるバラストシステムの強化

搭載燃料の増量

短距離離着陸性能の向上

エンジンの小型化とパワーアップ、色々なアップデートを考えられるそうです。

 

採算度返しなら革命的な海難飛行艇UM-3C(カーボン)が出来上がりそう。

まだまだ日本には高性能マシン作りの秘められた可能性があるんですね。

ではでは。

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