コンポーネントパーツメーカーが総力を上げて作った新製品、まったく新しい発想で作る製品は、大きな可能性がある革新性を備えたものだし、ビジネスチャンスだからこそ失敗はできないので、どうしても安全率の大き目な設計になりがちです。
90年にリリースされたシマノのデュアルコントロールレバーもそうでした。ブレーキレバーがメタル製で上の部分にシフトケーブルの巻き取り部分が設定されて、ブレーキレバーにリターンスプリングが設定されていましたが動きが重い感じで、裏側にはリターンの変速レバーが組み込まれていました。
日本の匠が作り出した生真面目な製品でした。
ブラケットもメタル製で、転倒時のブレーキレバー兼変速レバーの折れも、ブラケットの割れも許されません。
だから素材は重くてもメタルが選択されていたわけです。
確かに転んでも傷つくだけで丈夫でしたが、初期のデュアルコントロールレバーは重かったですし、昆虫の触覚のように飛び出たシフトケーブルは変速すると硬くなって、デュアルコントロールレバーの重さも重なって、ステアリングに影響がありました。
今、考えれば革新的な製品だけに、転倒で壊れてケチがついてしまう可能性があるので、世界を相手のビジネスとして失敗はしたくないと、オーバースペックな製品でしたけど、ダウンチューブのシフトレバーの時代に革命を起こすべくリリースされたわけです。
しばらくして、革新的な手元シフトのシステムが浸透してから軽量化が始まります。
アルミのブレーキレバーに変更されたり、カーボンブレーキレバーに変わったし、ブラケットも樹脂製に変わりました。そして、シフトケーブルの巻き取り機構の位置もブラケット側になったし、シフトやブレーキのケーブルの通し方もシンプルになりました。
製品の開発には色々な縛りがあります。性能面の向上はもちろん、取り付けのしやすさ、現場でのメンテナンス性の向上、コストカット、向上での製造のしやすさ、ユーザーやショップの革新的な製品に対する理解力など、スポーツバイクの世界が受け入れる状況などを配慮して、性能の設定や強度設計などを考えて、新製品のアイデアやコンセプトを掲げて、コンポーネントの互換性や統一性などトータルで開発を進めることになります。
手元シフトのデュアルコントロールレバーは、現在は初期モデルの半分くらいの重さに進化しました。ライバルの手元シフトのカンパニョーロのエルゴパワーシフターも、カーボン化や樹脂化が進み軽量化しました。
スラムだってユニークな機構のシングルレバーを開発して、軽さでは定評があります。もちろん軽量化のデメリットもあります。
転倒時のカーボンブレーキレバーの折れの発生です。
軽量化にはそういう部分もあります。
シマノが総力を挙げて開発して、先行した電動メカのDi2デュラエースのファーストモデルは、これこそモーター駆動の変速システムとして失敗が許されないので、過剰品質の状態でリリースされました。
もちろん電池でモーターを作動させて変速するシステムの基本構造は、このDi2デュラエースで確立されました。革新的なバイシクルコンポーネントはロードレース用に開発されました。当然、プロロードレースでの使用も配慮されて、洗車によるメンテナンスも可能になりました。
Di2デュラエースは水中での作動試験も行われていました。
前後変速機、接続プラグ、Di2のデュアルコントロールレバーが、ウオータープルーフやウオーターレジスタンスではなく、パーフェクトな防水構造を目指して開発されていたのです。
すぐ後にリリースされたDi2アルテグラは、Di2デュラエースが4針だったのが2針化されていたのを覚えていますか。
実はDi2デュラエースをベースにマイクロ化や電子制御システム、コスト高になる過剰品質を排除する専門知識を持ったスタッフが開発に加わり、リファインされました。
その後のDi2コンポーネントは、じわじわとシンプル&コンパクト化して行きます。
同時に電子機器らしくバージョンアップします。初代アルテグラに始まる2針でのエレクトリックコードでのコマンドのやり取り、機能の拡張性も盛り込まれます。
最新モデルのDi2デュラエースやDi2アルテグラは、マニュアル操作のインデックス変速だけでなく、シンクロやセミシンクロ変速などのプログラム変速も可能になっています。
旧モデルのDi2も容量の大きいAIの組み込まれた電池へ組み替えることで、シンクロシステムへバージョンアップできるようになっています。
カンパニョーロもバイシクルコンポーネントメーカーですが、その企業規模は大きくシマノに水をあけられています。
当然、電子制御メカニズムのEPSの開発に、アウトソーシングを採用しています。
シマノがすでにDi 2 に組み込んだプログラム変速って採用されるのかな。それより心配なのは、105に対抗するケンタウルの11スピードが、イタリアンブランドのロードバイクに搭載されるかで、サバイバルできるかが決まりそうです。
ドイツブランドのボッシュは、ホームセンターに行けば充電式の電動工具メーカーとして展示スペースを持っています。
そのボッシュが日本の複雑な道路交通法や車両法をかいくぐって、電動アシスト自転車の市場にEバイクで参入するだろうし、シマノは当然ヨーロッパでのEバイクの広がりを注視して日本に紹介して来たから、対応するコンポーネントの開発を進めているはず。メカニカルドーピングなんて狭い了見でいると、スポーツEバイクの流れに置いて行かれそうです。
ではでは。